オンライン・コミュニティでは多様な意見をもつ人々との議論を通じて参加者の社会的関心・寛容性が高まり社会参加が促進されると期待される。しかしながら、参加者が自分とは異なる意見を持つ人々と議論をすることを避けたり、他者の意見に同調することで、オンライン・コミュニティの意見が同質化する傾向も認められている。そこで、(1)オンライン・コミュニティでの議論において、どういうプロセスで意見の同質化や極性化を生じるのか、(2)オンライン・コミュニティでの議論が同質化(もしくは多様化)することを経験すると、参加者間の社会的ネットワークや一般的信頼、一般化された互酬性の規範への期待という「社会関係資本」がどのように変化するのか、(3)多様性の高い(もしくは低い)議論は、参加者の社会的寛容性や社会参加にどのような効果をもたらすのか、という3点を検証するために以下の実験調査を実施した。第1段階として、首都圏と関西圏在住のインターネット利用者に2つの社会的争点(教育問題と格差問題)に対する意見等についてオンラインで事前調査を行った。第2段階で、回答者の中から2000名を選んで、インターネット利用や社会関係資本、社会的寛容性等についてオンラインでプリテストを実施した。第3段階として、2つの社会的争点について、6名で1グループを作って5日間にわたりオンラインで議論をしてもらった。この時、参加者の意見の多様性のレベル(実験者が提示した意見に全員賛成・全員反対・賛成と反対が半々)と、年齢の多様性の高低(同年代・異年代)を操作して64グループを構成した。第4段階では、参加者384人(実験群)と非参加者499人(統制群)にプリテストと同じ内容のポストテストを行った。そして、オンラインでのディスカッションの多様性の効果を、実験群の参加の前後の比較や参加者と非参加者の比較によって明らかにした。
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