研究概要 |
オンライン・コミュニティでの議論が同質化(もしくは多様化)することを経験することが,参加者間の社会的ネットワークや一般的信頼,一般化された互酬性の規範への期待という「社会関係資本」,さらには参加者の社会的寛容性や社会参加にどのような効果をもたらすのか,を検証するために実験調査を実施した。「格差問題」と「教育問題」という2つの社会的争点について,6名で1グループを作って5日間にわたりオンラインで議論をしてもらった。この時,参加者の意見の多様性の3レベル(実験者が提示した意見に全員賛成・全員反対・賛成と反対が半々)と,年齢の多様性の高低の2レベル(同年代・異年代)を操作して,2×3×2の実験条件を作り,64グループを構成した。さらに,これらのオンライン議論参加者384人(実験群)の他に,非参加者499人(統制群)にプリテストとポストテストを実施し,その結果を比較し,議論の効果を検証した。オンライン議論参加者内では条件によって政治的寛容性の変化量には差がなったものの,オンライン議論に参加しなかった統制群と比較をすると,オンライン議論で異質な意見や同質な意見と接することがパースペクティブテイキングを高め,その結果,政治的寛容性を高まる傾向があることがわかった。Priceら(Price,Nir,& Cappella,2006)は異質な意見と接することで他者の立場の理解が促進され寛容性を高めることを指摘したが,同質な意見に接することもパースペクティブテイキングを高め,政治的寛容性を高めるメカニズムがあることが推測される。また,対人関係の垂直性もプラスの効果をもたらしており,世代が異なる人々と議論することがパースペクティブテイキングを高め政治的寛容性を高めることが示唆された。
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