研究概要 |
本研究の目的は,第1に,批判的思考の構成要素とプロセス,および日常生活(広告認知など)や文脈におけるコントロールメカニズム(発言の抑制など)を明らかにすることである.第2は,批判的思考教育プログラムを作成し,その教育実践の効果を検討することである.第3は,批判的思考のスキル・態度・知識を多角的に測定するツールの開発し,実験や教育実践に用いて,その信頼性と妥当性を検討することである. その主な成果は以下の4つに大きく分かれる.第1に,批判的思考態度が,商品選好判断時における商品属性情報の利用に及ぼす影響を検討した.その結果,批判的思考態度は,外的情報の処理だけでなく,自らの内的な情報処理の妥当性検出にも影響することが明らかとなった. 第2に,批判的思考に基づく発言抑制には,文脈や目標(楽しい気分になりたいなど),発話者の個人特性としての心理的負債感やメタ認知的統制感が影響を及ぼしていることが明らかとなった. 第3に,批判的思考について,大学導入教育・教養教育から専門教育,教職教育において実践を行い,その効果を,学習履歴,事前-事後の評定・テスト・活動量によって,質的・量的に検討した.とくに,質問に触れる経験,リフレクション(省察),学習者インタラクション(e-Learning,jigsaw学習や討論)が,批判的思考の態度・スキル(質問など)を向上させることを見いだした.また,内外の批判的思考に関する先進的取り組みをしている学校の授業参観をおこない,教育プログラムの立案に役立てた. 第4に,大学生を対象とするメディア・科学・リスクリテラシーの尺度,批判的思考スキルの有効性判断尺度,小・中学生を対象とする情報活用実践力,小学3-6年生を対象に算数知識,論証問題,批判的思考力態度尺度を作成・実施した.そして,相互の関連性や年齢差を明らかにした.さらに各尺度の問題点を明確化した.
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