研究概要 |
研究1の時間の知識と時間評価の学習過程に関する発達的研究では,予備的研究として,高校生(n=30)の時間の知識とそれを使用するときの方略について,2つの動体が運動する場面を用いて,個別に実験的に調べた。知識の適切な使用が,単に問題を繰り返しても,また誤答であることを指摘しても,ほとんど改善されないことを明らかにした。 研究2の言語行動の精神テンポと時間評価に及ぼすウソの効果に関する研究では,実験参加者は,真実の内容とウソの内容が含まれた2種類の文章を好みのテンポ(精神テンポ)で音読し,音声分析でウソがばれないように努めた。その結果,ウソの文章を読む時にテンポが有意に遅くなり感情によるテンポの変動が見出された。 研究3の時間評価における神経心理学的研究においては,脳損傷者に10秒の時間作成を求める時間評価課題を実施した。その結果,脳損傷者は,若年健常群と同様に直前のフィードバックは有効に利用できることが示唆されたが,フィードバックを有効利用しながらも基準に到達しない者もおり,時間評価には,評価時間を微細に調整する能力が必要であることが示された。 研究4の抑うつ状態の改善と時間評価・時間的展望の変化に関する研究では,抑うつ状態と時間的展望や時間評価との関連を調べるデータの収集と基礎的統計処理を実施した。具体的には,抑うつ状態の認められる精神科外来の通院患者,および健常な大学生を対象に,抑うつ傾向の評定と,時間的展望および時間評価の測定を計2回ずつ実施した。 研究5の時間管理能力・時間評価能力と自己効力感に関する実験的研究では,レポート課題への取り組み経験が特性的自己効力感,時間管理能力に及ぼす効果を調べるデータの収集と基礎的統計処理を終えた。具体的には大学生を対象にレポート課題実施前後の調査を計10回,1年間の特性的自己効力感,時間管理能力の変化を追跡する調査を計4回実施した。
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