研究概要 |
自閉症などの発達障害をもった子どもたちの療育施設(滋賀県近江八幡市)にコミュニケーションロボットを導入し、毎回約3時間の療育セッションを20回(約160人回)にわたって、プレイルームにおける日常的な療育場面における長期縦断的インタラクションを観察した。 このフィールド観察から多くのデータを収集することができた。子どもひとり一人のプロファイルの作成とその量的データ分析、個別あるいは集団の中でのコミュニケーション行為を分析した。データ分析は、基本的にロボットのカメラで捉えたビデオデータを使い、 子どもからロボットへの関わり方,養育者や療育士との関係について詳しいアノテーション(質的分析)を行ない,また数値化できるデータ(半自動的に計測された子どもの顔までの距離,あらかじめカテゴリ化された行為の頻度や持続時間など)についての統計分析を行なった.前年度までに,自閉症児が呈するコミュニケーション障害を説明する新しいモデルとして、知覚情報から他者の注意・感情・行為などを抽出するフィルタの機能が不全のため情報洪水を起こしているというモデルを構築したが,今年度は,これを支持する質的・量的なエビデンスについて集中的な分析を進めた。 また,これら活動と並行して,国内外の科学教育関係のイベントにおいて,おもに子ども向けのデモンストレーション(NextFest(米国ロサンゼルス),Robots at Play(デンマーク王国オーデンセ市),札幌市青少年科学館での先端科学技術講座など)を実施し,本研究をアピールするとともに,ロボットと子どもの発達についてのつながりを国内外に発信することができた.
|