研究概要 |
前年度までの2年間にわたって自閉症などの発達障害をもった子どもたちの療育施設(滋賀県近江八幡市)で,コミュニケーションロボットと子どもたちとの療育的なインタラクションを実践してきた.本補助金による研究プロジェクトの最終年度となる平成20年度は,これらのデータ分析(収録ビデオと動作ログの解析をベースとしたインタラクション分析)を行ない,分析結果を現場(小児科医・臨床心理士・療育士など)にフィードバックし,ケースカンファレンス等に活用するとともに,分析結果とその解釈(モデル考察)を論文および学会等で発表した.また,これに並行して,米国でも同様のインタラクション実験を行ない,同様の効果を確認した.(この模様は米国テレビで複数回報道されている.) 本研究プロジェクトにより,自閉症児にもコミュニケーションへの動機づけが存在すること,そしてシンプルなロボットを相手とすることで,社会的に意味のある情報(注意や情動の状態など)を読み取ることができること,そして,それらを通して自閉症児がロボットとの社会的な関係を構築できることが確かめられた.これを説明するモデルとして,自閉症児では,他者の行為を心的活動として理解するための「心理化フィルタ」が十分に機能していないが,「心理化フィルタ」を必要としないほどシンプルな対象(ロボット)であれば,自発的に社会的インタラクションに入っていけるという,「心理化フィルタ仮説」を構築した.現在,この仮説を検証するための発展研究を企画している. 加えて,前年に引き続き,国内外の科学教育イベントにも積極的に参加し,NextFest(Chicago, USA)・札幌市青少年科学館などでの科学啓蒙活動や,CES(Las Vegas, USA)・大阪市産業創造館などでの産業界への啓蒙活動も行なった.
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