研究概要 |
本年度は以下の研究を行った。 1.ネガティブ情動体験の処理様式の検討英国Poole病院DORSET研究・開発支援ユニット(英国保健省)のRoger Baker教授らが開発を進めている「Emotional Processing Scale」の日本語版を作成するための基礎データを大学生300名と30歳代から60歳代の範囲の一般成人800名から収集した。データは現在,解析中であり,その成果は平成19年10月にオランダ・ティルブルグ大学で開催される国際会議シンポジウムで発表する予定である。 2.ネガティブ感情の意識化の抑制がワーキングメモリ容量に及ぼす効果の実験的検討第一実験では,個人にとって望ましくないネガティブ感情体験の意識侵入・反鋼の頻度,思考抑制度とワーキングメモリ容量の相関関係を調べた。ワーキングメモリ容量はネガティブ感情体験の意識侵入・反甥の頻度よりも思考抑制度と負の相関を示すことが確認された。第2実験では,まずワーキングメモリ容量を測定し,つぎに実験参加者にスピーチ課題の準備をするよう求め,さらにスピーチ課題の内容についての思考を抑制するよう指示した。そのような抑制を指示しない場合よりも指示した場合の方がワーキングメモリ容量の減少を導くことが明らかになった。これらの実験の結果は,ネガティブ感情の意識化そのものよりも,ネガティブ感情の意識化を回避するために抑制することがワーキングメモリ容量の減少を導くことを示唆する。 3.ネガティブ感情要因と社会的相互作用の抑制要因の個人差の検討この研究では,ネガティブ感情要因と社会的相互作用要因が心臓血管系の疾患の罹患リスクであるとし,ネガティブ感情の経験度と社会的相互作用の抑制度の個人差を測定するための「タイプDパーソナリティ尺度」の開発を行なった。本年度はそのための基礎データを大学生300名と30歳代から60歳代の範囲の一般成人800名から収集した。データは現在,解析中である。 4.ネガティブ感情の対処過程に関する個人史調査の項目の選定を行なった。この調査の調査票および面接は平成19年度に実施する予定である。
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