研究課題/領域番号 |
18330152
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
細川 徹 東北大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (60091740)
|
研究分担者 |
本郷 一夫 東北大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (30173652)
内山 伊知郎 同志社大学, 文学部, 教授 (00211079)
野口 和人 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40237821)
|
キーワード | 鏡像自己認識 / 乳幼児 / 発達障害児 / 視覚運動随伴性 |
研究概要 |
本年度は、健常幼児(2〜5歳)24名と自閉性障害児(生活年齢7〜11歳、社会生活年齢2〜6歳)10名を対象に、自己鏡映像をリアルタイムで提示する場合と遅延提示する場合について初年度に開発した鏡映イメージ・フィードバック・システムを用いて比較分析した。その結果、遅延条件(1秒)でステッカー課題(ルージュまたはマーク・テストと同じ)を通過したのは健常幼児が50%、自閉性障害児が20%であったのに対し、リアルタイム条件ではそれぞれ67%、50%であった。すなわち、遅延条件では鏡映像が自分であることを確認できなかつたがリアルタイム条件では確認できた者は、健常幼児では17%であったのに対し、自閉性障害児では30%にのぼった。また、自閉性障害児は健常幼児に比べて、課題遂行中に観察された自己探索行動の生起頻度が遅延条件では低かったが、リアルタイム条件では逆に高かった。以上のことから、(1)自己の芽生えとされる鏡像自己認識の成立は、健常児と社会生活年齢をマッチングした自閉性障害児では著しい遅れはない。しかし、(2)時間随伴性の歪み(鏡映イメージの遅延再生)が与えられると、自閉性障害児の自己認識は大きく低下する。ただし、(3)自閉性障害児は鏡映イメージの感覚運動成分(すなわち動きの同期性)に対してより敏感に反応する傾向がある。さらに、(4)自閉性障害児は現在の自分には興味があり認識もできるが、過去の自分になると途端に興味を失い自己認識もできなくなる、ということが指摘できる。また、このことは、鏡映イメージの認知に関して顔認知成分にのみ注目するのではなく、発達的により初期に現れる手がかりとしての視覚運動成分(随伴性)について、神経科学的基礎も含めて詳しく分析する必要があることを示唆するものである。
|