研究概要 |
運動視は、その機能が重要であるばかりではなく,初期視覚の2つの経路,大細胞経路と小細胞経路の前者を特徴づける点でも重要である。これらの2つの経路は,網膜から大脳への中継地点である外側膝状体(LGN)の細胞の特性を基に2分されるが,それぞれ主に大脳視覚野における行動経路と認識経路の2つの経路に情報を伝える。19年度には、運動残効の特性についての心理物理実験に基づき、時間的に低周波、空間的に低周波の選択性をもつ運動検出メカニズム(速い運動検出器)と時間的に高周波、空間的に高周波の選択性をもつ運動検出メカニズム(遅い運動検出器)の特性を比較し、以下の事柄を明らかにした。回転や拡大/縮小などの大域運動に対して、速い運動検出器と遅い運動検出器の関与を比較し、大域運動が主に遅い運動検出器の出力によって決まっていることを示した。眼球運動に対する運動残効の測定から、追従眼球運動が知覚とほぼ同じ性質を持つことを明らかにし、速い運動検出器も遅い運動検出器も眼球運動の処理に関わっていることを示した。さらに、これらの速い運動検出器と遅い運動検出器の関連脳内部位を確認するためには、fMRIの予備実験を行った。その結果、運動刺激に関連部位の同定方法をほぼ確立した。また、fMRI対応んために開発した応答時間による残効測定法を利用することで、運動刺激に対する感度低下が運動残効と同じメカニズムによることも示した。その他関連する知見として、立体視に対する刺激速度の影響、運動刺激を利用した色覚メカニズムの解明の研究成果も得た。
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