研究課題
本研究は、ワーキングメモリの脆弱化が進む高齢者を対象として、ワーキングメモリの中核をなす中央実行系の機能強化訓練に取り組むことを目的とした。中央実行系は、ワーキングメモリがスムーズに機能する上での統括機能として働き、注意の焦点化と抑制制御が特に重要であると考えられる。本年度は、ワーキングメモリの注意制御機能をつかさどると考えられる前頭前野の背外側部と前部帯状回に着目して、その機能を高める訓練を計画した。強化訓練の対象は、高齢者としたが、若年者の中央実行系における注意制御機構の神経基盤についても、高齢者と同様に検討を行なった。本年度は、特に高齢者で問題となる抑制制御に着目した。抑制制御は、言語的な抑制過程が問題になるストルーブ課題を応用して訓練を行なった。訓練の効果は、行動データでは遂行成績の向上と反応時間の短縮化が確認された。特に、侵入エラーが減少するなど、抑制制御が促進していることが推測された。さらに、訓練前と訓練後のfMRIを用いた脳の活動領域の測定から、訓練前には前部帯状回の活動はほとんど認められない状態であったのに対して、訓練後の測定では、背外側部とともに前部帯状回の活動の上昇が認められた。この結果は、訓練により、抑制制御が機能強化されたことを示唆するものと考える。この傾向は、特にワーキングメモリ遂行に困難を示した高齢者に特徴的であった。さらに、高齢者の年齢の違いにより、抑制制御が異なる結果も得られた。この点については、次年度においてさらに検討すべき課題であると考える
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ワーキングメモリにおける注意のフォーカスと抑制の脳内表現」(京都大学学術出版会)
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