研究概要 |
本研究の目的は,ヒトの運動系が感覚系に及ぼす影響を実験的に調べることである.実験を通じ,運動系の影響が,感覚系のどのくらい初期の過程にまで及んでいるかを解明する.実験方法としては心理学実験,脳機能画像解析,バーチャルリアリティを用いる.本年度に行った実験は次の4種類である. 1. 視聴覚交互作用 視覚情報と聴覚情報の空間的位置が近接しているほど視聴覚間の時間的交互作用は強くなるという従来の常識を覆し、視聴覚情報の空間的近接性よりも空間的明確性が重要であることを示した.結果は国際会議IMRFで発表した後,IEICE Transactionsに投稿し,受理され,2008年6月の刊行を待つ状態である. 2. 触覚的物体認知 注意を移動するときに,同じ物体内での移動の方が異なる物体間での移動よりも高速であるという,同物体効果が視覚で起きることが知られている.この現象が触覚でも起きることを調べるため,電気刺激を発生する実験装置を作成して視覚と触覚に関する実験を行い,同物体効果が,視覚,触覚,視触覚のいずれの事態でも起きることを明らかにし,結果を国際学会IMRFで発表した.またその装置を改良し,振動刺激を用いることができるよう改造した. 3. 動作制御能動性とアクティブタッチ 片麻痺リハビリテーション支援のために開発中の装置を用いて,手の動作の能動性を制御し,棒を握って太さを判断する課題を用いてアクティブタッチとの関係を調べた.結果は日本バーチャルリアリティ学会の研究会で発表した.またその棒を改造し,硬さを判断する課題が行えるようにした. 4. 自己顔の認知 自分の顔というきわめて熟知性が高い図形を用いた視覚探索実験を行い,自分の顔の記憶表現が顔の正像ではなく鏡像であることを,探索非対称性に注目することにより明らかにした.この結果は国際学会ECVPで発表するとともに,査読誌『基礎心理学研究』に投稿し,掲載された.
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