研究概要 |
「かたさ」知覚実験で常に問題となるのは,実験材料の選定であった.成形が容易で,経時変化が無く,適当な粘弾性特性を有している材料を見つけることは困難な作業であった.昨年度に備品として購入した力覚デバイス(OMEGA, Force Demension)は,プログラミングにより様々な力学特性を有する仮想材料を創造可能である.本年度は,力覚デバイス制御プログラミングの開発を行い,複数の仮想実験サンプルと基準刺激を創造した.サンプルは押し込み時と引き戻し時の力学特性が異なるものを創造した.ヒトが軟物体の硬さ知覚を行うときには手指を押し込み反復運動させるが,押し込む過程,最も押し込んだ時,引き戻す過程,反復運動全体,のいずれの過程において知覚が行われているのは明らかでない.創造したサンプルを用いた硬さ知覚実験で,官能評価が押し込み時の力学特性,引き戻し時の力学特性,あるいは,その複合した力学特性のいずれと一致するのかを調べることにより,この問題を解決することができる.例えば,ヒトが最も手指を押し込んだ時の力学特性を基に硬さ知覚を行うことが明らかとなれば,バーチャルリアリティ空間における力覚呈示時に,ヒトが最も手指を押し込んだ時にのみ正確な呈示を行えばよいことになり,演算量の低減が可能となる.
|