研究課題
本年度の研究プロセスでは、概ね次のような二っの課題に取り組むことが重点とされた。(1)海外の識字研究者との研究交流を推進する。彼らにこれまでの我々研究グループの研究成果を公表し、国際的な観点からの今後の識字研究の方向性について、探究するべき今後の課題を闡明にする。(2)国内の隣接他分野の研究者との研究交流を進め、より柔軟な研究視角を設定するための最新の研究情報を獲得する。両者のうち重点課題である(1)については、11月2〜3日にわたってアメリカ合衆国インディアナ大学において開催された「日本における識字の歴史」と題された国際カンファレンスでの研究報告が中心となった。2002年度から2005年度にかけて行われた我々の活動のなかで、相当数の民衆の花押(自署)を含む資料の収集がなされたが、それらの資料分析の結果を踏まえて、2回の研究会を(5月14日および8月4〜5日)を実施し、今年度の研究メンバー全員による報告主題を以下のように明確化した。(a)古代律令制国家と文字との関係(b)前近代の最も有力な宗教である仏教と識字との関係(c)16世紀末から17世紀にかけての近江地域の識字率(d)17世紀初頭の長崎および京都における識字率(e)近世女性のテクスト・教科書にみる識字力(f)明治期の識字率調査の六つである。日本側研究者からの報告に対して、インディアナ大学ルビンジャー教授、エリソン教授より、外国人研究者としての視点からの研究報告があり、カンファレンス参加者も交えた相互に活発な質疑応答がなされ、今後の課題を確認した。(2)については、言語動態学分野の中村雄祐東京大学大学院助教授をゲストに迎え、今後の研究活動への重要な示唆を得ることができた。
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