(1)未開拓の状況に近い前近代日本における識字力の展開過程に関する量的把握について解明するために、識字の最低ラインを示す資料として「花押」に注目し、とりわけ民衆層の「花押」が記載された資料の蒐集に努める。また、その量的把握ないしは質的分析を通して、前近代日本の社会における民衆層の識字力形成の一端について明らかにする。さらに、民衆資料のなかに識字力に関連するものについても分析を行い、多面的・重層的に課題にアプローチする。 (2)研究成果を海外に向けて発信するために、海外の識字研究者とのコラボレ ーションを行うことも重要な課題である。このことによって、これまで主として欧米の識字研究者が進めてきたアルファベット文字圏に関する研究への偏重を、表語文字の漢字に独自の表音文字をシステムを混合させて使用する日本における識字研究を通して、是正させるという、大きなねらいがある。
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