研究概要 |
本研究の目的は,第1に1966年以来制度化されてきた教員養成系大学院の歴史的経過を検証しその経過に埋め込まれた可能性と課題を明らかにすること,第2に諸外国の教育系大学院の現状と課題を検討し日本への示唆を導出することにある。特に現在,教職大学院たちあげの時期であり,かつての教育系大学院の歴史的経過を振り返り,同時に外国の教育系大学院の状況を参照することは,今日の教育課題とリンクして,ますます重要なテーマとなっている。 研究三年目の本年は,数回の研究会議を組織して研究を進展させ,研究資料『教員養成系大学院の制度と教育実態〜基本資料と解説』(2008.9,A4版364頁)を作成した。本冊子の内容は,(1)日本における教員養成系大学院の制度と教育実態,(2)欧米における教師教育と大学院,(3)東アジアにおける教師教育と大学院の三部で構成され,本科研の研究過程で収集・分析した資料を整理し,集録した。また,上記(1)(2)の内容をもとに,日本教師教育学会全国研究大会(工学院大学)において二つの研究発表を行った。さらに,ロンドン大学のDavid Crook氏の招待講演会を企画し,研究交流を行った。 上記の取組を通し,研究の推進・交流・普及を行ったが,本年度の主な実績は以下のようである。(1)教員養成系大学院に関する基礎的データの収集整理を行い,その内容を冊子化して研究の公共財として提供した。(2)英・米・東アジアの教師教育と大学院に関する現状と課題を整理し,研究資料や学会報告等で発信した。(3)教職大学院の実践状況を内在的に検討し,その成果を研究資料や学会報告等で発信した。ただ,これらは,教員養成系大学院をめぐる概況と課題を明示した段階にとどまり,歴史的経過と比較研究を通して,今後の展望を提示するまでには至らなかった。教職大学院での実践データの収集と検討を含め,今後より深めた研究を蓄積し,成果を出版化できればと計画している。
|