研究課題/領域番号 |
18330165
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
牧野 篤 名古屋大学, 大学院教育発達科学研究科, 教授 (20252207)
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研究分担者 |
小林 敦子 (新保 敦子) 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90195769)
鐙屋 真理子 (一見 真理子) 国立教育政策研究所, 国際研究・協力部, 統括研究官 (20249907)
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キーワード | 教育学 / 少子高齢化 / 生育意識 / 東アジア / 人工妊娠中絶 / 学歴社会 |
研究概要 |
本研究課題初年度の今年度(平成18年度)は、主に少子化の促進要因について、東アジア各国・地域における歴史的実態の把握を試みた。以下のことが明らかとなった。 1.東アジア地域は急速な少子高齢化が招かれており、東アジアモデルとして特徴づけられること。世界的には以下の4つのモデルが認められる。(1)西欧先進国モデル:経済発展し、かつ高齢化・少子化がもたらされている地域、(2)東欧・旧ソ連モデル:経済発展は途上だが、高齢化・少子化が招かれている地域、(3)中東産油国モデル:経済指標は高いが、高齢化・少子化の進展がない地域、(4)東アジアモデル:経済発展水準はまちまちだが、急速な少子化・高齢化の動きを見せている地域。東アジアモデルは、急激な少子化が高齢化を招いている点が特徴である。/2.東アジア各国・地域で少子化を招いたのは、人為的な出産調整の結果であること。東アジア各国・地域の合計特殊出生率は、日本1.29(2003年)、韓国1.19(2003年)、台湾1.24(2003年)、中国の上海では0.68(2000年)にまで落ち込んでいる。少子化進展の大きな要因は、人工妊娠中絶である。日本では1950年代半ばから60年代初頭にかけて、出生者数100に対して中絶数80という時期を経て、急激な少子社会が出現しており、韓国も60年代後半から80年代初頭にかけて中絶数の急上昇があり、急速な少子化が招かれている。/3民衆が出生者数を調整した背景には、経済発展に伴う急激な学歴社会の形成が存在しており、教育費の家計負担の急増と子どもの家庭内扶養期間の延長が要因として作用していること。出産経験者のほとんどが、子どもは2名まででよいという社会の風潮であり、少なく生んで、より高い教育を与えることが親の責任だと考えていたという。育児雑誌や女性雑誌も、ほとんど例外なく出産・育児と賢い子どもを育てることをリンクさせており、社会的な少子化促進の背景を示している。
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