研究概要 |
戦後日本に形成・導入され1960年代を通じて定着していった種々の教育行財政制度のうち,とりわけ初等中等教育段階を対象とするものに焦点をあてて,いったん定着した社会制度にどのような場合に変化がもたらされるか,もたらされないかを検証するための具体的事例の選定作業をすすめ,そのひとつとして1970年代教育改革論議の画期となった昭和46年6月中央教育審議会答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」,いわゆる「四六答申」を取り上げることの妥当性を検証した。よって本年度はその先行研究や公開資料済み行政文書史料の収集・分析を中心に行い,国立公文書館所蔵の同審議会議事録関係マイクロ資料から,とりわけ第9期中央教育審議会第25特別委員会(初等・中等教育改革基本構想)の議事録・配布資料等の行政文書を複写し,義務教育費国庫負担制度および私費負担解消関連制度にかかわる改革提言が審議された経緯の分析を進めた。その過程において,国立公文書館所蔵の当該資料目録では十分な情報が記載されていないことの限界があることが判明したことから,その所蔵資料との相互対照が容易な形式での資料目録の整備にとりかかった。またこれと並行して,おもに政治学分野の外国文献によりながら制度改革が当初の計画どおりに進まない要因あるいは改革が実現しないことを説明するための 「制度的補完性」論,「新しい制度」論,「アイディア・アプローチ」,「言説の政治」論,「漸進的な変化」論,「レジームポリティクス」論などの諸アプローチを,日本の教育行財政制度改革に応用する可能性を検証する作業を行った。
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