研究概要 |
平成19年度には,平成18年度実施の調査の分析結果を公表するとともに,追跡調査を行った。 まず,得られた知見は以下の3点である。(1)学校文化(とりわけ学校行事積極度)の大都市一地方都市による差異,(2)地域移動に対する考え方(とりわけ大学卒業後地元で働くつもりか否か)のジェンダー差,そして,(3)これらの差異が難関大学への進学期待や社会貢献にかかわる意識に及ぼす影響である。これらの知見により,高校卒業以前(base year)における生徒たちの意識の差異を確認することで,高校段階における「プラスアルファ」の教育がその後のキャリア,社会生活に及ぼす影響を把握する手がかりを得たことになる。なお,これらの成果は,日本教育社会学会大会において報告し,『東京大学大学院教育学研究科紀要』の掲載論文として公開した。 次に,パネルの2年目として,高校卒業1年後の追跡調査を実施した。まず,質問紙調査の実施に先立って,32名の調査対象者の協力をえてインタビュー調査を行い,「プラスアルファの教育」や大学進学に伴う地域移動が大学生活や将来展望に及ぼす影響を中心に把握した。このインタビュー調査の結果をふまえて調査票を作成し,前年度と同一の調査対象者に対して質問紙調査(郵送法)を実施した。有効回収票は775票であり,回収率は34%であった。これらの調査でえられたデータと高校卒業以前のデータとをあわせて分析することで,大学進学や地域移動という経験のなかで,将来展望や社会貢献に対する意識がどのように変化したのか,またその変化に「プラスアルファ」の教育がいかなる影響を及ぼしているのかを明らかにすることが可能となる。この分析結果については,本年9月の教育社会学会大会で報告する予定である。
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