研究課題
学齢期から思春期・青年期に至るまでの発達障害児(者)に対して、療育や教育の重要性と同時に、「不登校、引きこもり、精神神経的症状、いじめ・被虐待、暴力的噴出、非行・行為障害・触法行為」などの深刻な「二次的障害・不適応」に対する予防・改善の重要性が指摘されている。しかしそうした不適応の実態や支援に関して、本人・当事者の視点からの背景・要因の検討や本人・当事者が求めている理解・支援を明らかにする作業はきわめて不十分である。そこで本研究では、発達障害を有する本人への質問紙法調査を通して、本人・当事者の視点からみた学校不適応の実態やその背景・要因を具体的に明らかにした。調査対象は、医療機関や専門機関でLD、ADHD、アスペルガー症候群、高機能自閉症、発達障害を併せもつ知的障害等と診断・判定され、またそうした障害認識を十分に有する高校生以上の青年・成人当事者で、学齢期の学校不適応を客観的に振り返って記述することが可能な方である。調査内容は、(1)学校生活の不適応(学校登校、授業参加)、(2)対人関係の不適応(教師・カウンセラー等、友人・クラスメイト、家族との対人関係において経験した困難)、(3)日常生活の不適応(日常生活の行動・動作、日常の人との関わりにおいて受けた誤解・理不尽と感じた対応)。調査期間は2007年11月〜2008年1月、発達障害の本人79人から回答をいただいた。困難・不適応のうちもっとも多い回答は「クラスメイトとの会話や遊びは合わないので一人でいることが多いが、そのことが理解されず変わり者扱いされて辛い思いをしたことがある」63.3%であった。学校生活においてクラスメイトや友人との関係は大きな比重を占め、その関係がうまくいかないことは学校生活自体が苦痛となってしまう。障害別・所属別で比較したところ、とくにADHDは学校生活、対人関係いずれにおいても高い困難・不適応を示した。なお不適応にはそれぞれ特有の要因があることが示唆され、一人ひとりについて丁寧に背景・要因を探る必要がある。
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Japanese Journal of Special Education, The Japanese Association of Special Education Vol.45No.6
ページ: 527-541
『東京学芸大学紀要』(総合教育科学系) 第59集
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『学校教育学研究論集』 16号
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