音声の基本的要素である音の高さ、強さ、長さについて、軽度発達障害児を対象に弁別域を測定した。その結果、軽度発達障害児は、健常児に比較していずれの要素についても弁別域が大きく、これらの基本要素について感度が低下していることが明らかになった。従って、これらの要素の複合体である音韻の聞き取りについては、当然ながら受聴明瞭度が低下することが予測される。 さらに、騒音下における単語の聞き取りを行った。SN比を変化させ、健聴児において受聴明瞭度が70%の時のSN比で、聴覚認知障害児(と思われる)に対して聞き取りテストを行った。その結果、平均受聴明瞭度は47%であり、有意に低下していることが判った。このことは、聴覚認知障害児では、音韻そのものの受聴明瞭度の低下に加えて騒音下における受聴明瞭度も低下していた。このことは、特に学校教育における教室での教師や他の児童の音声の聞き取りについて特別な配慮を必要としており、今後、教育現場へのアピールが必要と思われた。 軽度発達中学生を対象とした上記と同様な実験では、小学生児童とは異なった結果が得られた。中学生では、音の基本要素に関する弁別域は、同年齢の健聴生徒と同じレベルにあり差はみられなかった。つまりこれらの基本要素の識別は、軽度発達障害があっても成長に伴ってその能力が向上することが考えられる。 一方、騒音下における受聴明瞭度の測定では、上記児童の場合と同様に同年齢の健聴生徒よりも低下しており、その平均受聴明瞭尾は52%であった。
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