HFPDD群の子どもの年齢、物語再話の命題数、疑問詞質問への十分応答率、はい/いいえ質問への十分応答率、質問への合計応答失敗率、応答失敗への母親の補償率及びスキップ率の7変数の相関(ピアソンのr)を算出した。ここでいう補償は、質問タイプの変更・質問範囲の限局・質問内容の変更・質問の詳述・伝達行為の要求・余分な推論のいずれかに当てはまるものとし、スキップはこれらが見られず、子どもの応答失敗後に母親が別の話題に移るか、自答した場合とした。子どものナラティヴは、最初の5分間に見られたアニメの内容の再話に含まれる命題の数を秋田・大村(1987)にしたがって算出した。その結果、HFPDD群では再話命題数は、疑問詞質問およびはい・いいえ質問への十分応答率と有意な正の相関を示し、補償率及びスキップ率とは有意な負の相関を示した。年齢との相関はなかった。ところがTD群では、このような変数間の有意な相関はほとんど見られなかった。唯一、再話命題数とスキップ率に正の有意な相関がみられたが、HFPDD群とは逆の結果となった。なお、補償に対するスキップの比はTD群がHFPDD群より有意に高かった。HFPDD群のナラティヴは質問に十分応答する割合・失敗する割合と有意に相関し、TD群ではそのような相関は見られない。またHFPDD群のナラティヴは応答失敗の補償率と有意な相関を示した。母親の質問に十分な応答ができることがHFPDD群ではナラティヴの能力と関連しており、それが低い場合母親が応答失敗を補償する率が高い。
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