研究概要 |
軽度発達障害,言語障害,知的障害,自閉症,重度重複障害の各事例の教育支援にICF理念とモデルを適用し,その有効性についての実践的検証を行なった.その過程で,支援の実施・継続において各事例の担任をはじめとする学校教員とのケース検討会や定例研究会など,研究連携体制の強化を図った.この結果,ICFモデルの適用により支援内容が具体化することを確認し,有効性が示唆された.また,モデルを活用した評価により,対象事例の具体的生活像を支援関係者で共有しやすくなるなど,支援における共通言語としての有効性を確認した.これらの成果を,本研究課題の中間まとめとして,実践事例集「特別支援教育とICF-ICFは如何に障害児教育の課題を継承し、克服するのか-」(全80頁)を刊行した(2009.3).これを全国の特別支援教育関係各方面に送付し,広く意見を求める.今後の実践モデル構築に向けた研究の進展に活用し得る重要な体制が整った. 他方,WHOは2007年10月,ICFでは人生の最初の20年間における急激な成長と変化を十分に把握できないことから,"この重要な発達期におけるより細やかな対応が可能になる"ものとして,ICFの派生分類ICF-CYを公表・刊行した.これを受けて厚生労働省は,来る2009年3月に日本語版を刊行することとしている.このICFに関する新たな動向を踏まえつつ,これまでの研究をとおして新たに抽出された4つの個別課題,すなわち(1)本人の主体性が反映される支援目標設定原理と手続きの解明,(2)ICF活用における支援者と本人の利便性の峻別とその要件の明確化,(3)ライフステージを貫く支援の連続性を重視したチームアプローチへの活用,(4)発達捕捉におけるICF-CYコードの有効性検討,を新規課題に追加した研究計画の補強・再構築を行い,各種障害事例への適用と検証,資料の蓄積と分析に着手した.
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