本研究は、視覚障害の特性に配慮したコンピュータの標準的な指導方法を明らかにし、指導手引書を作成することをめざしている。本年度は、国内調査としては筑波大学附属盲学校を、海外調査としては英国の、リソースベースが設置されている小学校、中等教育を提供する盲学校、継続教育カレッジを、それぞれ中心に研究を実施した。後者についての研究成果を以下に示す。 1.リソースベースであるマークイートン小学校では、子どもの概念発達の段階に即し、情報技術教育にさまざまな段階を設定して指導を行っている。PCを用いた最も初期の学習は、原因と結果の学習であり、画面のどこを触っても音のフィードバックがあるというものである。 2.視覚障害児に対するICTの指導における配慮事項を標準化しまとめた手引き書は策定されておらず、多分に教師個々の力量に依存している。 3.マークイートン小学校では、教材は実物、模型、触図、PC教材など多岐にわたっていたが、特に触察の力を高めることに重点が置かれていた。継続教育カレッジでは、DAISY教材が多く作成され、図や表などの視覚情報は音声化して説明されていた。英国では、段階的に触察能力を高めるための教材として、立体コピーのワークブックセットが作成され、市販されていた。また、RNIBでは、触察教材作成の基準を標準化する取り組みが行われていた。 4.英国には視覚障害者への支援技術指導者のための資格(BTCS)がある。しかし、BTCS取得者のうち、学校や専門学校等の教育現場で支援教育に関わっている人はいなかった。 5.ウースター盲学校や継続教育カレッジでは、生徒が必要なときにいつでもPCと支援機器を自由に使用できる環境が整えられている。視覚障害者にとってPCと支援機器は、自ら能動的に外界に働きかける態度、問題を解決する能力を育成するためのツールとして捉えられている。
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