研究概要 |
モチフィックコホモロジーとは,代数体の整数環のイデアル類群や単数群,代数多様体のChow群などを一般化したもで,数論的多様体のL-関数とも密接に関連する重要な研究対象である.これにたいする重要な未解決問題として数論的多様体のモチフィックコホモロジーの有限性予想がある.これは,代数体のイデアル類群が有限であること,あるいは代数体の整数環の単数群が有限生成であるという古典的な基本定理の高次元版である.この予想については,これまで上述の1次元の場合を除いて殆ど肯定的な結果はなかった.当該研究においては,これまでこの問題に対する一般的なアプローチを発見していた.基本的なアイデアは上述の予想を加藤予想と関係付けることである.加藤予想とは,上述の問題とはまったく別のコンテクストにおいて加藤和也氏により1986年に提出された予想である.加藤氏は,有限体上の射影的で滑らかな多様体X,あるいは整数環上のregular proper flatなスキームXと整数qにたいし,ある数論幾何的な不変量KH_q(X)を定義して,これがq=0以外では消えていることを予想した.Xが有限体上の曲線,あるいは代数体の整数環のスペクトラムの場合の加藤予想は,有限体上の一変数関数体あるいは代数体Kのブラウアー群に関する古典的類体論の基本事実(K上の中心的単純環にたいするHasse原理)に同値である. 前年度まで研究により,特異点の解消を認めた上で,有限体の多様体にたいする加藤予想を解決することに成功していた.本年度の研究の成果は,最近Gabberにより示されたdeJongのalterationの理論の精密化を用いることにより,有限体の多様体にたいする加藤予想の標数と素な部分を特異点の解消の仮定なしに示すことに成功したことである.
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