本年度は前年度に得られた研究成果を査読者の指摘に基づき改良して出版するとともに下記の新しい研究結果を得た ・定義体上は単純だが絶対単純ではないある種の種数2の超楕円曲線で超楕円暗号に適するものを検証可能ランダム性をもちかつ高速に生成するアルゴリズムを与えた。また、そのような曲線の離散対数問題の困難性をほかの曲線の離散対数問題の困難性と比較するいくつかの結果を得た。特に、この型の曲線は超楕円曲線全体の族から見れば非常に特殊な曲線ではあるが現時点で研究者の知る限り一般の超楕円曲線に比べて実用性を損なうほどの脆弱性はない。むしろ、特殊な構造を利用して、ある種の楕円曲線の離散対数よりは確実に離散対数問題が困難であるという超楕円暗号の安全性に関する下からの評価を得た。 ・上記研究成果の手法を用い、曲線でペアリングに基づく暗号に、従来知られていた構成法よりも、より効率のよい曲線を構成するアルゴリズムを与えた。具体的にはゼータ関数の関係式を使いヤコビ多様体が分解する体上で因子として含まれる楕円曲線でヤコビ多様体自身がペアリング暗号に適するようなものを構成することにより行われる。ここで、因子として含まれる楕円曲線はペアリング暗号には適さないことを指摘しておく。生成された超楕円曲線は従来法で生成されたものよりも3割程度効率がよいが楕円曲線の場合にはまだ及ばない。この点は今後の研究課題である。
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