本年度は当研究課題の最終年度であり、これまで得られた研究成果の発表と今後の展望を踏まえた研究を中心に行った。前年度までの研究でペアリングに基づく楕円暗号は明示公式に対する脆弱性を持ちそうもないことが分かった。しかし、ペアリングに基づく暗号を実現するためには、基礎となる離散対数の困難でありペアリング自体が実用的に計算でき、しかも計算効率が出来るだけ高いいような楕円曲線(あるいは超楕円曲線)を構成する必要がある。計算効率はいわゆるρ値が出来るだけ1に近づけることが目標であるこの問題に対し、前年度の研究はそれまでに知られていた方法と同程度のρ=4程度の曲線を構成することしか出来ていなかった。 今年度はDavid Freeman氏との共同研究においてρ=2.651の種数2の曲線族を発表した。これは研究代表者の知る限りにおいてこの報告の作成時点での最善記録である。他方、ある種の条件のもとで我々の構成法でのρ値の下限を与えた。特に埋め込み次数が4ならばρ値の下限は2であることが判明した。これは今後の研究を進める上で重要な指針である。 上記の研究成果に加えて、楕円曲線の係数制限の中から上述の曲線族のようにρ値に本質的に貢献する部分(原始多様体)を構成する方法を与えた。
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