研究概要 |
(1)穴あきトーラス束に付随するCannon-Thurston写像の研究 擬アノソフ写像をモノドロミーに持つ円周上の穴あきトーラヌ束に付随して,平面上の二つのタイル張りが生じる.一つは標準的分割が導くカスプトーラスの三角形分割の(カスプトーラスの普遍被覆である)複素平面への持ち上げであり,もう一つは,Cannon-Thurston写像が定めるCannon-Thurston-Dicksフラクタルタイル張りである.Warren Dicksとの共同研究により,この二つの分割の間には,自然な関係があることを証明した.正確に述べると,この両者は同じ頂点を集合持ち,更に三角形分割の組み合わせ構造は,フラクタルタイル張りの組み合わせ構造を決定し,その逆も成り立つ.本論文は現在投稿中である. (2)一般の穴あき曲面に付随するCannon-Thurston写像の研究 擬アノソフ写像をモノドロミーに持つ円周上の穴あき曲面束に付随するCannon-Thurston写像が定めるCannon-Thurston-Dicksフラクタルタイル張りの頂点集合持をモノドロミーの安定・非安定測度付き葉層構造を用いて記述した.更に,研究(1)にヒントを得て,穴あき曲面束の標準的分割に関する自然な予想を提案した.この予想をバルセロナ,ツールーズのセミナーで発表したところ,非常に強い関心を持って頂いた. (3)穴あきトーラス二重カスプ群と二重退化群の関係の研究 穴あきトーラス二重カスプ群の極限集合はサークルチェインと呼ばれる円周の列を含むが,Caroline Seriesとの共同研究により,二重退化群に強収束する穴あきトーラス二重カスプ群の列に付随するサークルチェインは,Cannor-Thurston-Dicksフラクタルタイル張りの1次元骨格に収束することを証明した.
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