研究概要 |
昨年度に引き続き,自然な仮定のもとで特異点をもつ曲面のクラスの性質を,ワイエルストラス型表現公式を用いて調べた.また,特異点をもつ曲面の微分幾何学の基礎理論を考察し,あるクラスの曲面に対して「特異点つきガウス・ボンネの定理」を示した. 3次元双曲型空間の平坦曲面について:双幽型空聞の完備な平坦曲面はホロ球面と円柱に限ることが古典的に知られているが,特異点を許すと非自明かつ興味深い例が数多く現れる.このような曲面のクラス「平坦フロント」は,代表者,分担者によって様々な視点から調べられてきたが,今回はとくに完備ではなく,一般に特異点が「エンド」に集積するような例(平坦曲面の焦面に自然に現れる)の瀬近挙動を詳細に調べた.その過程においてエンドのフラックスと軸の概念を導入した. 極大面の幾何:ミンコフスキー空間のある種の特異点をもつ極大曲面を極大面と名づけたが,その特異点として自然に現れるcupspidal cross capの判定条件を与え,極大面にgenericに現れる特異点はcuspidal edge,swallowtail,cuspidal crosscapであることを示した. 特異点の微分幾何学:特異点をもつ曲面,とくにフロントの特異点集合上に曲率を定義し,それを用いてガウス・ボンネの定理を定式化した.さらにこの状況を内的に(曲面のambient spaceに依存しない形で)定式化し,特異点つきの内的なガウス・ボンネの定理を得た.その際,corank1の特異点における「内角」の概念を導入した. 双曲的シュワルツ写像:超幾何関数のシュワルツ写像(リーマン球面への写像)を,3次元双曲空聞に「リフト」することにより,双曲空間の平坦フロントを作ることができる.これを双曲的シュワルツ写像と名付け,その性質を調べた.とくに,超幾何関数のモノドロミー群を双曲空間の運動群に埋め込むことによりモノドロミーの「可視化」が行えることを示した.また様々な例についてその特異点の挙動を調べた.
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