研究分担者 |
今野 一宏 大阪大学, 理学研究科, 教授 (10186869)
杉田 洋 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50192125)
杉本 充 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60196756)
満渕 俊樹 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80116102)
長岡 浩司 電気通信大学, 大学院・情報システム学研究科, 教授 (80192235)
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研究概要 |
本研究の目的は,量子推定理論や量子情報理論の諸問題におけるこれまでの研究成果を統合・発展させ,非可換統計学における量子情報幾何学的方法の確立を目指すことにある.本年度は以下のような研究を行った. Hilbert空間H上の状態空間S(H)に作用する力学的変化(量子通信路)は,トレースを保存する完全正写像〓:S(H)→S(H)で表現される.本研究では,未知の通信路がパラメータθで特定されるという状況の下で,通信路の拡大(id〓_θ)^(〓n)を許容したパラメータθの推定問題を扱い,拡大次数nに関する通信路のFisher情報量の増大レートを微分幾何学の観点から統一的に研究する手法の開発を行った.まず初めに,通信路全体からなる空間を底空間とし,通信路の作用素和表現をファイバーとするファイバーバンドル構造を導入し,通信路のFisher情報量が底空間の接ベクトルの水平持ち上げの作用素ノルムで表されることを明らかにした.次いでこの表式に基づき,すべての通信路のFisher情報量は高々0(n^2)で増大することを証明すると共に,0(n)で増大するための十分条件を導出した.さらにはこの判定条件を用いて,ほとんど全ての量子通信路が0(n)という漸近レートを持つことまで明らかにすることができた.本研究成果は,非可換統計学における大きな未解決問題に対する画期的な進展を与えるという意味で特筆すべき成果であり,しかも純粋に幾何学的観点からは,ファイバーバンドル構造が量子情報幾何においても全く新しい重要な方法論を提供しうることを明らかにしたという意味で斬新な成果である.
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