研究概要 |
Spyros Alexakis氏を招聘し局所ケーラー不変量の積分についての共同研究を開始した.目標とする予想は「局所ケーラー不変量Iの積分かケーラークラスのみに依存する複素多様体の不変量であればIはチャーン不変式と発散項の和である」というものである.この予想が正しければ射影的なケーラー多様体上の負の正則線束内の円柱領域のセゲー核の漸近展開の係数とチャーン不変式との関係を書き下すことができる.またこのような円柱領域にたいしてはCR Q-曲率の積分が消えることも導くことができる.これらの議論は局所化を行うことにより佐々木多様体にたいしても一般化することができる. 予想の証明の第一歩として,局所不変量Iが曲率の微分を含まない場合での証明を与えた.ここで主要な考察は局所不変量Iがリッチテンソルのみの完全縮約を含むことである.この項がチャーン多項式を決定することが分かる.曲率テンソルの微分を含む不変はについては,多段の帰納法により微分のタイプを特定な形に標準化できることを示したが,最後の壁を越えるには更なるアイディアが必要である. またこの共同研究の過程でセゲー核とQ-曲率の関係に関する新しい記述方法を発見した.これまでは対数項の係数がQ-曲率を含むことは分かっていたが他の項については未知であった.そこで上述の円柱領(あるいは佐々木多様体)の場合にはセゲー核の漸近展開の係数は次元によらない形式的な不変式であり,その中にQ-曲率の形式的な表示が含まれることを示した.これは次元を形式的に考えることにより得られる新しい記述手法であり,Alexakis氏によるアイディアをもとにしている.
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