研究概要 |
前年度に引き続き偶数次元のアンビエント計量の理論の出版準備を進めた。その主要定理は共形構造に対する変形複体のアンビエント空間へのリフトの構成である.リフトの対応を用いることにより共形構造の曲率のジェットとアンビエント計量の曲率のジェットの間の同型定理が証明できる.しかしジェット空間の既約空間への分解が複雑であるため,最初に与えた証明からはジェヅト空間の対応を読み取るのは困難であった.この議論を簡略化するためにジェット空間のコンポジション・シリーズの直接的な対応を与えた.さらにジェット同型定理の応用として共形構造のスカラー不変量の構成を行った;とくに共形多様体の次元が8以下の場合には全てのスカラー共形不変量をアンビエント計量の具体的な不変量として与えることに成功した.この構成方法はより高い次元でも実行可能であり,特定の次数の有限個の不変量を除いてすべてのスカラー不変量を与える. またテンソルのアンビエント空間へのリフトの一般論の応用として,ワイル構造に対するQ一曲率の定義を与えた.これまで知られていたQ-曲率はリーマン計量の局所不変量であり,共形変形に関する変換則が共形不変線形微分作用素で与えられるものであった.この定義からQ-曲率はレビ・チビタ接続により決定されることがわかり,さらにQ-曲率は共形構造を保つ接続(ワイル構造)に対しても定義可能であると予想されていた(イーストウッド等による).この予想が正しいことを1形式のアンビエント空間へのリフトを用いて示した.
|