研究概要 |
表現論に立脚した表現論ではなく,幾何構造から自然に生まれ出る無限次元の対称性から表現論を新たに捉えるというプログラムを推し進めた。 今年度は特に,研究代表者の提唱した「複素多様体における可視的な作用」という概念を用いて無重複表現の統一的理解を深めた。第一論文ではエルミート対称空間において等長変換群の対称部分群の作用が可視的であるということを証明し,第二論文ではこれを用いて有限次元および無限次元(連続スペクトルが現れる場合を含む)の無重複定理を統一的に証明した。また第六論文では非対称な空間における可視的作用の分類を手がけた。 上記の研究に加え,D型の群の極小表現のL^2モデルの解析や不連続群の研究を行い,別記の7本の論文を公表した。さらに,砂田利一教授の還屠記念国際研究集会,Vinberg教授の70歳記念研究集会(opening lecture)(ドイツ),Helgason教授の80歳記念研究集会(アイスランド共和国)やMax-PlanckおよびHausdorff研究所の2007年度のスペシャルプログラムの統括シンポジウムRepresentation Theory, Complex Analysis and lntegra] Geometry"でのclosing lecture,アメリカ数学会, Sackler DistinguishedLecture,夏至国際研究集会(フランス)等で招待講演を行いそれぞれ聴衆に合わせた内容で成果公表を行った。さらにハーバード大学(アメリカ合衆国)では,第一,二論文および未発表の新結果の解説を連続講義の形で行い,成果を公表した。 さらに,次年度以降の研究に向けた長期的な視野を広げ,また分野全体の活性化をはかるため,東京大学大学院数理科学研究科においてLie Group and Representation Seminar"を定期的に主催し,近郊の専門家が研究交流する場を設けた。また,日本数学会と東京大学の支援を受けて,Neeb教授他5名を招聘した『第2回・第3回高木レクチャー』を主催してその予稿集を出版した。ドイツでは,Oberwolfach研究集会を主催(海外研究協力者と共同)し,その報告集を出版した。韓国でSchmid教授, Yang教授等と主催したシンポジウムの論文集『表現論と保型形式』の査読が終わり,これをBirkhauser社より出版した。
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