研究概要 |
1.KdV階層のタウ関数は,ブラウニアンシートを用いて表示される調和振動子型の2次ウイナー汎関数を指数にもつ指数型ウイナー汎関数の期待値として表現できる.ブラウニアンシートを実現する抽象ウイナー空間を導入し,その空間上のマリアヴァン解析を展開することにより,ブラウニアンシートに付随する確率振動積分の無限積表現について統一的な計算方法を確立した.これにより,無反射ポテンシャルに対応する固有値の計算方法を導き出した.またYorにより求められていた表示式の誤りを発見し修正もできた.これらの結果については現在論文にまとめている.2.KdV方程式への確率解析の応用についての現在までに得た成果に関する報告を論文としてまとめ発表した(AMS Contemporary Mathに掲載予定).3.KdV階層の研究で重要な役割を果たすプリュッカー座標の概念が,2次ウイナー汎関数の条件付き期待値の表示においても自然に現れることを既に発見していたが,そのことを1で述べた調和振動子型ウイナー汎関数の期待値への応用について考察を行っている.4.KdV階層のタウ関数が確率振動積分により表示されることは,その行列表示の対応に基づいて証明され,必ずしも直接的な関係が解明されているわけではない.確率振動積分において二つの独立な被積分関数を用いることで広田微分の確率積分への拡張を試みている.この試みにより,広田微分と伊藤積分の関連を解明できれば,より直接的なKdV階層と確率振動積分の関連が見いだせるものと思われる.
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