研究概要 |
量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式ならびに基本作用素であるシュレーディンガー作用素について広汎な研究を行った。今年度の研究成果は以下のようである。 (1)研究代表者は以下の結果を得た。(a)調和振動子の無限遠方で二次関数より増大度が小さいポテンシャルによる摂動にともなう時間依存型方程式の初期値問題の基本解は,摂動の2階微分に対する適当な正値性の条件のもとで,調和振動子の場合と異なって,空間的になめらかな関数であることが研究代表者によって知られているが,この時,基本解は無限遠方において代数的に増大することを発見した。この増大度は摂動が大きくなると却って減少すると言う,一見矛盾する様に見えるが,これを準古典近似によって解釈し整合性を示した。(b)時間に依存したベクトル・ポテンシャルやスカラー・ポテンシャルをもつシュレーディンガー方程式の解作用素の存在と一意性を,ポテンシャルの不連続性と増大度の条件を従来より大幅に改善し,これらが時間に依存しない場合にハミルトニアンが本質的に自己共役となるための最良の条件を完全に含む形で証明した。 (2)研究分担者藤原大輔は引き続きファインマン経路積分の研究を進展させた。 (3)連携研究者中村周は,シュレーディンガー方程式の解の特異性の伝播,ランダム・シュレーディンガー作用素のスペクトル理論、散乱多様体上のシュレーディンガー作用素に対する散乱理論などについて従来の結果を大きく改善する多くの成果を得た.
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