本研究で南極に口径2mの赤外線望遠鏡を設置するための基礎的な技術開発とサイト調査のための装置の開発を行った。国立極地研究所を中心として日本が開発を進めている南極の氷床「ドームふじ」は標高が高く(3810m)、大気の透過率も高いと予想される。しかしシーイング等の天文学的条件に関するデータがない。そこで、ドームふじの天文学的気象条件(シーイング、測光夜数、背景光の明るさ)の調査を行うために、口径40cmの極地用望遠鏡の光学系と鏡筒を開発した。-80度で正常に動作するためには、できる限り同じ材質で熱膨張などの影響をさける必要がある。特に、ドームふじはきわめて厳しい環境にあるので、現地での調整はできる限り少なくしなければならない。常温で調整した後、冷却化でも性能を維持できるような様々な工夫を行った。ドームふじ基地は大陸に厚さ3000m以上もの氷が覆っている地域である。その氷の上に建築物を設置した場合、次第に沈降していく。従って望遠鏡とドームの軽量化と設置方法が懸案となる。本研究では雪上に構造物を建設する技術について検討を行った。また望遠鏡や観測装置は極低温下に置かれるために、電気・電子機器が動作しない場合が想定される。そこでマイナス80度環境での観測装置の正常な駆動と性能を確認するために、本研究で用いる様々な電気部品をマイナス80度に冷却して動作確認を行った。具体的に天文サイト調査を進めるために音波で大気の擾乱するSODARと雪上車と機の振動をしらべるための加速度計を第48次隊南極観測隊に観測装置を託し、シーイングと振動に関するデータを得た。
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