国立極地研究所を中心として日本が開発を進めている南極の氷床「ドームふじ」は標高が高く(3810m)、大気の透過率も高いと予想される。しかしシーイング等の天文学的条件に関するデータがない。そこで、ドームふじの天文学的気象条件(シーイング、測光夜数、背景光の明るさ)の調査を行うために、口径40cmの極地用望遠鏡を開発した。-80度で正常に動作するためには、できる限り同じ材質で熱膨張などの影響をさける必要がある。特にドームふじはきわめて厳しい環境にあるので、現地での調整はできる限り少なくしなければならない。そこで常温で調整した後、冷却化でも性能を維持する軸受けなどを開発した。また運搬と現地での組み上げを容易にするために、総量200kg余りある望遠鏡は5分割できる構造とし、最低2人での組み上げができることを確認した。本装置の極寒環境での性能を評価するために、平成20年2月に日本で一番寒い場所といわれる北海道陸別町に分解した望遠鏡を運搬し、現地で組み上げ実験観測を行った。最低気温は-23℃だったが、この極寒環境においても、望遠鏡、制御システムなど必要な観測装置は暖める必要もなく、正常に動作し、当初の性能が出ていることを確認した。その他、極寒で動作する機械部品、電気・電子回路の技術的検討、大型望遠鏡の雪上設置法の検討、シーイング測定装置DIMMの開発、SODAR乱流強度の微小熱擾乱への較正を行った。
|