本研究課題では、Swift衛星、および我が国のX線衛星「すざく」衛星と連携をとって、ガンマ線バースト(GRB)の初期放射(prompt emission)の可視光同時観測を試みる。これまで、この目的のために我々は、GRB観測衛星の広い視野を自動的に追尾する広視野高感度のCCDカメラシステムを構築し、東京大学宇宙線研究所明野観測所で構築し運用してきた。今年度から開始した本研究課題では、さらに高感度・高効率の観測をめざし、より夜光の少ない東京大学天文教育センター木曽観測所への移設をおこなった。さらに、レンズの焦点距離を35mmから50mmに交換することによる、SN比の改善をすすめ、それに伴う観測視野が狭くなることを補償するために、カメラを1台新たに購入し、3台から4台への増強した。あわせて十分な仰角を確保し観測時間を伸ばすために、改良型の観測小屋を新設した。観測小屋の改良に十分な検討を加えたため、改良型観測小屋での実際のシステム構築は2年目に持ち越されることになったが、カメラおよび赤道儀、制御システムは、すでに移設した旧型の観測小屋で稼働しており、今年度の計画はほぼ達成できたといえる。 同時に、Swift衛星や「すざく」衛星を用いたGRB観測、また東アジアの可視光残光ネットワークをもちいたGRB研究も進展させ、その成果を国内外の学会、研究会で公表した。とくに、Swift衛星と「すざく」衛星の連携によるGRB初期残光観測を行い、その成果を論文として公表した。特にこれは、GRB発生から5.3時間で汎用X線天文台による観測を成功させるという快挙であり、これまででもっとも早期のジェットブレークを検出するという成果を上げた。
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