研究概要 |
近年の観測的宇宙論,および,銀河天文学においては,大規模なディープサーベイによって多数の遠方銀河を分光観測し,その赤方偏移から天体までの距離を求め,各種輝線等の物理的性質を統計的に扱うことにより,銀河進化や銀河構造の形成モデルを構築するための知見としている。特に,赤方偏移後の近赤外線は,星形成史や質量,ダスト吸収を見積もる上で不可欠な情報である。限られた観測時間内に効率よく多くの天文観測を行うために,我が国の「すばる望遠鏡」をはじめとして,直径8メートル級の天体望遠鏡の多くはマルチスリット分光器を備えている。本研究では新たに,シリコン半導体マイクロマシニング技術を応用して,印加電圧の静電引力で駆動するマイクロシャッタ,アレイを製作し,天体望遠鏡に搭載する近赤外分光器の可変マルチスリットとして利用する方法を提案した。NASAが開発中の電磁石駆動型のシャッタ,アレイと比較して,本方式は厚さ1mm以下の狭い空間内で効率よく高密度シャッタ,アレイを構成することが可能である。寸法0.1mm×1mmのシャッタを,幅1.5ミクロン,厚さ1.5μm,長さ450μmの単結晶シリコン製トーションバーで支持し,基板裏側から形成した貫通孔内に静電引力で吸引する方式を開発した。行列数3×10のシャッタ,アレイのサブユニットを製作し,100v程度の直流電圧による静電駆動で個別マトリクス駆動と開状態保持の動作が可能であることを示した。本シャッタは液体窒素温度(77K)での動作を要求されているものであるため,実際に製作したシャッタを真空デュワ内で冷却することにより,温度変化に対する変形などの挙動を観察した。その結果をユニモルフ熱変形の解析モデルと照合し,低温においても変形の程度の少ないマイクロシャッタの設計法
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