1. CCDを用いて製作した中性子検出器の、中性子に対する位置分解能を精密に調べた。製作した検出器は、位置分解能を最大限に高めるために、中性子を荷電粒子に変換するコンバータ用の金属薄膜をCCD上に直に蒸着した。コンバータとしては、高い変換効率を期待できる^6Liと^<10>Bを比較した。詳しい解析の結果、^6Liの場合は5.3μm、^<10>Bの場合は2.9pmの位置分解能を達成できることを示した。これほど精密な位置をリアルタイムに測定できる中性子検出器は前例がなく、多分野で応用が期待できる。 2. フランスのラウエ-ランジュヴァン研究所において、実際の超冷中性子が物質表面で反射する様子を調べた。その結果、ほぼ予想通りの反射をすることが確認できた。したがって、本研究で開発した凸面鏡を用いた拡大システムは、超冷中性子でも予想通りに動作すると考えられる。 3. これまでの研究結果をもとに、超冷中性子を重力場中に束縛して中性子の空間分布を拡大・観察するための実験装置の設計を見直した。CCD中性子検出器の位置分解能が当初の予想よりも高かったので、拡大システムによる拡大率を下げた。拡大率を下げることによって、拡大システムの製作が容易になり、より確実な動作を保証できる。以上の結果を総合して、重力場中に束縛された超冷中性子の空間分布を測定するための実験装置を製作した。 4. 現状では、十分な統計精度を期待できる強力な超冷中性子源を持つ施設がフランスのラウエ-ランジュヴァン研究所に限られるため、超冷中性子を用いる研究は進めにくい。しかし、2008年末になって我々の実験企画書が同研究所に受理され、超冷中性子を用いて実験することが認められた。中性子のエネルギーが量子化されている様子を明瞭に捉え、詳しい解析によって未知短距離力の探索を目指す。
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