研究課題/領域番号 |
18340058
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
柴田 利明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (80251601)
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研究分担者 |
宮地 義之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (50334511)
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キーワード | 陽子スピン / 核子スピン / クォーク / グルーオン / 量子色力学 / パートン / HERMES / DESY |
研究概要 |
陽子のスピンに対するクォークのスピンの寄与は20-30%にすぎない、ということが約20年前にEMC実験により発見され、グルーオンのスピンや、クォーク・グルーオンの軌道運動が寄与している可能性があるので、世界中の主要な粒子加速器のほぼすべてで、この陽子のスピンの問題が研究されている。本研究では、高エネルギーの偏極電子ビームと偏極陽子標的を用いて、ドイツ・DESYでHERMES国際共同研究として行った。電子と陽子の深非弾性散乱による実験である。 まず、横偏極の陽子標的を用いた実験データの解析から、発生したπ中間子、K中間子について、電子が散乱された方向との角度相関を測ると、軌道運動を反映するスピン非対称度があることが発見された。これは、クォークのスピン以外の寄与を示唆する最初の結果であり、陽子のスピン構造の研究にとって新しい展開となった。この研究を集中的に行った。 ついで、電子が散乱されて高エネルギーの実光子が発生し、標的陽子は壊れない、という過程を深仮想コンプトン散乱と呼ぶが、それに特化した実験データを平成19年度に取ることができた。これは、密度の高い陽子標的をDESY-HERA加速器の中に入れて行う測定で、標的のまわりに反跳粒子検出器を導入して、標的が壊れていない事象を選んで測定を行った。この反跳粒子検出器はHERMES実験の長年にわたる技術開発のテーマであったが、完成して測定に成功したことは重要な成果であるといえる。取得した大量のデータから、約10編の論文が順次発表される。
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