我々のグループでは二重ベータ崩壊・暗黒物質(DM)探索という超稀現象探索実験として、フッ化カルシウム(CaF_2)シンチレータを用いたCANDLES計画を進めている。本研究課題ではこのCaF_2結晶に含まれるバックグラウンド(BG)低減研究としてシンチレータの内部放射性不純物低減と、シンチレーション特性の制御によるBGの低減を進める。 1.結晶内放射性不純物の低減。 前年度に行った純化の手法を用いて生成した原料を利用して結晶を作成した。その際、結晶成長過程による影響も確認するため、いくつか異なる結晶成長手法を用いた。得られた結晶の放射性不純物濃度を測定するため、前年度までに確立した手法である地下実験室での遅延同時計数法を用いて測定を行った。この結果、結晶内の放射性不純物濃度の低減は着実に進んでいるが、一方で現時点での不純物濃度では原料の違いによる影響がまだ主であることが分かった。これを受けて、今後は原料の処理、特に溶融処理に着目して不純物濃度の低減を進めていくことを計画している。 2.CaF_2結晶の発光量・消光係数測定 活性剤を添加したCaF_2結晶の発光量などの測定を行った。昨年のものとは異なる数種の活性剤を添加した結晶を作成したが、残念ながら発光量の増大は認められなかった。今後は環境条件、特に温度による発光量や時定数の違いに着目して研究を進めていくべく、準備を行っている。条件としては比較的容易に実現可能な液体窒素温度を念頭に置き、低温での測定が可能な装置の準備を進めている。
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