研究課題/領域番号 |
18340063
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒見 泰寛 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (90251602)
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研究分担者 |
畑中 吉次 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (50144530)
岡村 弘之 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10221144)
作田 誠 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40178596)
民井 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (20302804)
若狭 智嗣 九州大学, 理学研究院, 助教授 (10311771)
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キーワード | 核力 / コヒーレントパイ中間子生成 / ランダウミグダルパラメータ / ガス電子増幅検出器 / パイ中間子凝縮 / GEM |
研究概要 |
本研究では、超新星爆発の終状態で形成されると考えられる中性子星の内部構造の解明するために、特に中性子星のような高密度核物質中で実現されると予想されるパイ中間子凝縮状態について調べる。基本的な物理量であるパイ中間子凝縮状態への相転移の臨界密度は、核力の短距離成分の強さ、特にΔ粒子間の相互作用:g'_<ΔΔ>に依存することが、相対論的平均場近似などの理論計算から評価されている。そこで、中間エネルギー陽子ビームによるコヒーレントパイ中間子生成実験(CPP)を行い、このg'_<ΔΔ>を実験的に決定することを目指す。 コヒーレントパイ中間子生成:p+^<12>C→n+^<12>C+π^+は、入射陽子から放出された仮想パイ中間子が原子核中の核子と相互作用を行い、原子核媒質中でΔ粒子・空孔状態が生成・伝播され、終状態で実パイ中間子と中性子が放出される反応である。この断面積とピークの位置はg'_<ΔΔ>に依存しており、その精密測定には高分解能による中性子とπ中間子のエネルギーを測定することが重要となる。今回、新しくπ中間子検出のための粒子飛跡検出器:ガス電子増幅検出器(GEM)を本課題の予算にて開発し、阪大・核物理研究センターに設置されている高分解能中性子検出器を用いてCPPのテスト実験をおこなった。 GEM検出器は、多数の穴が開けられた両面が導体の薄い膜(GEMフィルム)と電荷読み出し基盤で構成され、両面に印加された高電圧により穴周辺に電場勾配を形成しガス増幅をおこなう。今回のCPP実験には、残留核の状態を区別するために高い位置分解能をもち、また原子核反応が起こる標的付近に設置することから耐放射線に強い検出器が必要となる。そこで、放電によるGEMフィルム損傷を避けるため、比較的低電圧を1枚のGEMに印加し、それらを3枚配置して高増幅度を実現した。高い位置分解能を実現するために、半導体微細加工技術を用いて、薄いガラスエポキシの基盤上に積層構造で200umピッチのストリップを水平・垂直方向にそれぞれの層に配置し、2次元位置情報を得る読み出し基盤を製作した。また、多チャンネルの信号を読み出すために、ひとつの基板上にデータを一時的にバッファリングして同期信号とともにシリアルにデータを伝送していく読み出し回路を開発した。 これらの構成要素を組み合わせ、2組のGEM検出器で構成されたパイ中間子測定器をくみ上げ、大阪大学・核物理研究センターの加速器を用いて、陽子ビームによる性能評価を行い、所定の位置分解能を有することを確認した。また、双極磁石中にこのパイ中間子測定器を設置し、中性子検出器と組み合わせて、パイ中間子と中性子の同時計測をおこない、CPP測定の実験技術の確認をおこなった。次年度は、検出器およびビームラインの最適化をおこなって、CPP実験の本測定を予定している。
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