研究課題
本研究が目指す円形加速器によるミューオンビームのイオン化冷却において、円形加速器は次の2つの性質を兼ね備えることが要求される。一つ目は、冷却前の広がったビームを許容できる大きなアクセプタンス、二つ目は、高周波加速空洞及び減速材、そして、入射取り出しシステムを挿入するための充分なストレートセクションである。ミューオン電子転換過程探索実験のために設計したPRISM-FFAGは、同様の特徴を備えるFFAGとして設計したのものであり、本研究が目指すリングのベースデザインとして最適である。このPRISM-FFAGを改良し、さらに進んだミューオン電子転換過程探索実験の検討を進めると共に、PRISM-FFAGを発展させた新しいラティスと加速器技術を検討するために、PRISMタスクフォースを設立した。これは、研究代表者である佐藤と英国インペリアルカレッジ・ロンドンのJ.Pasternak氏が中心となり、日本と英国・米国・欧州の素粒子・加速器研究者を集めた、国際協力研究グループである。ミューオンのイオン化冷却には、300MeV付近のエネルギーが適している。PRISM-FFAGのオリジナルラティスについて、300MeVミューオンが周回するように磁場を高め、高周波空洞とくさび形減速材を配した円形リングによるビーム冷却の場合は、ラティスの角度方向のアクセプタンスが充分でないこととベータファンクション大きすぎることにより、ビーム冷却には適さないことがシミュレーション計算により判明した。一方、このタスクフォースの中で、森教授らは、スケーリングFFAG電磁石によるストレートセクションを挿入したレーストラック型のFFAGリングの研究を進め、大アクセプタンスを有するレーストラック型のFFAGリングの設計に成功した。ストレートセクションでは、ビームの分散関数を調節することも可能であり、円形ビーム冷却リングへとしても期待が持てる新しい可能性が提案された。また、入射取り出しようのキッカーについては、ニュートリノ・ファクトリーで検討されているキッカー電磁石システムの応用について検討した。
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Proceedings of COOL09
ページ: THPMCP008