本研究では、米国ブルックヘプン国立研究所(BNL)の相対論的重イオン衝突型加速器RHICにおいて希事象精密測定実験PHENIXを推進し、電子陽電子対測定と光子測定の有機的結合による包括的な物理理解を通して、(1)量子色力学相転移とパートン非束縛相の存在を確実に検証し、長年に亘るクォーク・グルーオン・プラズマ相の探索に終止符を打つ、(2)パートン非束縛相の性質を包括的に理解する、(3)非摸動的量子色力学現象としてのハドロン質量の発現機機構解明への手掛りを得る、の3点の成果を研究目的としている。平成18年度は下記の研究実績を上げた。 (1)米国BNL研究所RHIC加速器PHENIX実験において収集済の核子間衝突重心エネルギー√<S_<NN>>=200 GeV(RHIC加速器最高エネルギー)における金原子核+金原子核衝突事象データを用いて、複数の透過的測定を通した物理解析を推進し、精度の高い解析手法を確立した。特に、 (a)軽いベクトル中間子の電子陽電子対崩壊過程の解析を主導した。パートン非束縛相中での崩壊において真空中からの変化が予想される収量・質量状態・崩壊寿命・各崩壊過程への分岐比などの精査準備を推進した。 (b)軽いベクトル中間子の光子崩壊過程の高精度測定を推進した。 (2)国内外の理論専門家を中心とする物理学研究者との横の連携を強化し、実験成果の物理解釈を推進した。実験解析成果を有機的に結合し、パートン非束縛相の存在検証と性質探求を推進した。 (3√<S_<NN>>=200 GeVにおける金原子核+金原子核衝突反応の高輝度高統計データ収集を要求し、平成18年度末から平成19年度に掛けてのデータ収集を実現した。特に不変質量の小さい領域での電子陽電子対測定および低〜中間横運動量領域の光子測定を主導予定である。
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