ガス増幅を用いた光電子増倍管を開発するに当たって、1)ガス中で高い量子効率を有する光電陰極の製作、2)10^6以上の高ゲインを有し、且つ、photon-feedback、ion-feedbackが問題にならないような構造であること、3)長期に安定した動作が得られること、などが重要な要素となる。これらを念頭に置きながら以下の項目に関して開発を進めた。 (1)電場計算プログラムによる検出器の構造設計 電場計算プログラム(GarfieldとMaxwell)を用いて、最適な電子増幅を得るために必要なキャピラリーやGEMの厚さ、細孔の径などのパラメーターを決定した。光電子がGEMの細孔に収集される効率が最大になるような、電極構造を設計した。(担当:門叶) (2)GEMのみの場合とGEM+MicroMegasの場合の安定性の比較 (1)の設計に従い、数種類のGEMを調達した。GEMの厚さに関しては、50μm、100μmの2種類を用意した。また材質に関しても、ポリイミド、LCDなどを用いて試作しその違いを調べた。 ガス増幅部として、a)GEMを3層用いた場合、b)GEM2層+MicroMegas1層、c)GEM1層+MicroMegas2層、の3パターンのものを製作し、それぞれのゲイン、長期安定性などを調べた。 いずれの場合も、印加電圧を最適化することにより10^6以上のゲインが得られることが判った。 (3)真空中でのトランスファー技術を用いての組み立て トランスファー技術を用いて、ガス光電子増倍管を試作した。光電陰極としてCsIを用いたものは比較的安定した動作が得られたが、バイアルカリを光電面に使用したときには、量子効率の大きな劣化が見られた。この劣化の原因を解明し、対策を講じることが今後の課題となっている。
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