研究課題
昨年度に引き続き、ガス増幅型光電子増倍管(GasPMT)の経時安定性に関しての研究を進めた。キャピラリーの素材、細孔の形状、使用するガスの種類などを変えて、検出効率の経時的安定性を測定した。これまでの研究で、Micromegasと呼ばれるメッシュのみを増輻部に用いたGasPMTでは長期の安定性が得られているが、GEMなどの細孔部でガス増幅を行うGasPMTでは短期間での劣化が観測されている。条件を変えたGasPMTの試作品を多数製作し、現在も長期安定性の試験を継続して行っている。安定性にはイオンフィードバックと呼ばれる、ガス増幅中に生成された陽イオンが光電陰極に衝突する現象が影響していると思われる。このイオンフィードバックを抑制するメカニズムとしてGEMなど細孔を有するガス増幅部が有効であると考えられてきたが、測定結果はそれを否定している。これは新しい知見であり、今後、GasPMTの構造を考える上で、重要な要素となる。また安定性は使用するガスに依存することも考えられ、フォトンフィードバックの問題はあるものの、希ガスのみを用いたGasPMTの試験を行う必要があると考えられる。またGEM型GasPMTの時間特性、波高分解能そして高磁場中での特性など、基本的な性能を評価した。時間特性に関しては立ち上がり15nsが得られ、通常の真空型の光電子増倍管には劣るものの、十分な性能が得られることが分かった。137Csからのγ線をNaIに照射し、そのシンチレション光を計測して、波高分解能15%(FWHM)が得られた。磁場に関しては、管軸方向に1.5Teslaの磁場をかけ、磁場なしの場合との相対的な波高の比較を行った。その結果、1.5Teslaの高磁場中でも約75%の波高が得られており、これまで高磁場中で用いられてきたFineMesh型の光電子増倍管に比べても、十分に高い性能が得られることが分かった。
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Nuclear Instruments and Methods A581
ページ: 236-240
Journal of Physics, Conference Series 65
ページ: 012020-24