研究課題
基盤研究(B)
1テスラという高磁場中でも稼働する光検出器を、より安価に大型化して製作することを目指して、ガス増幅型の光電子増倍管(GasPMT)の開発を行った。可視光領域の光に感度を持たせるためにバイアルカリの光電面を製作し、Ar/CH_4=90/10の混合ガス中で600日間放置したが、量子効率に大きな変化は見られなかった。また1.5テスラの高磁場中でも信号が得られることも確認できた。しかし、GasPMTの製作段階でガス増幅に使用するGEMの材質によって、光電面が著しく劣化することが判明した。これまで一般的に使用されていたカプトン製のGEMは使用できず、Pyrexガラスを用いたGEMを製作することにした。ガラスGEMの製作方法としてサンド・ブラスティング(マイクロ・ブラスティング:MB)法を用いることにした。MB法で製作されたGEMによるガス増幅率は、ガラスキャピラリーで製作さたGEMと同じ性能を有することがわかった。こうして製作されたGEMをバイアルカリ光電面と組み合わせてGasPMTを製作し、試験を行った。その結果、ガス増幅率GがGEMに印加された電圧Vに対してG∝V^αという関係から大きく逸脱することがわかった。これはイオン・フィードバックと呼ばれる現象によるもので、ガス増幅中に生成されたイオンが光電面を叩き余分な電子が生成されることで生じる。この現象を抑制しなければ得られる電気信号が不安定となる。この現象を理解するためにシミュレーションによりイオンの運動を調べたところ、Micromegasと呼ばれる金属メッシュを入れることでイオン・フィードバックが抑制されることがわかった。GEMとMicromegasを組み合わせて様々なGasPMTを製作した。2段のGEMとMicromegasを組み合わせたGasPMTでイオン・フィードバックがかなり抑制されることがわかった。また、大きなイオン・フィードバックがあると光電感度も劣化することも分かってきた。そのため、GasPMTの実用化には、よりイオン・フィードバックを抑制する方法を考案する必要がある。
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