研究概要 |
平成20年度はDFI干渉計の周波数スペクトル領域に於ける感度を測定するにより,変位雑音の相殺効果を確認した.単体のマッハツェンダー干渉計(通常構成のレーザー干渉計に相当)をDFI構成にすることにより,大幅な干渉計感度の向上が実現され,広い周波数領域に渡って自然に存在する変位雑音の相殺効果が明確に確認された.実測された最大相殺率は最大で60dBにのぼる.1kHzより高周波側ではすでに光の散射雑音のみにより制限される感度が実現された.一方,一部低周波帯域では相殺しきれない雑音が残り,全帯域散射雑音レベルには至っていない.信号処理系の非対称性できまる相殺効果の上限は140dB程度であることがわかっていることから,これは干渉計そのものに起因する非対称性が相殺効果の上限を制限しているものと考えられる. これら非対称性の原因として,光学定盤を空気バネで浮かす防振の効果が見られなかったことから,これは地面振動を介する擾乱ではなく,音響擾乱,空気揺らぎ等の影響を媒介にした雑音であることが,これまでのレーザー干渉計開発の経験と併せて強く示唆される.これはOFI光学系を真空容器に格納し,大気を媒介にする擾乱を抑えることで劇的に改善するはずである. 以上により,昨年度行った大信号を用いた原理検証実験を発展させ、より現実的な状況下での雑音の相殺効果を実験的に確かめるとともに,現在の感度を制限する原因について重要な知見を得た.これらは,本実験を更に発展させ、量子非破壊計測等に応用するにあたり,大変重要な礎となった.
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