100万トン級の水チェレンコフ検出器の設計を進めるために必要な諸事項のスタディーに関しては、本科研費で週20時間のパートタイム研究員1名を半年間雇用し、中村および塩澤の指導の下に次の研究を行った。(1)土被り600〜700mと想定されるハイパーカミオカンデ建設予定地における宇宙線ミュー粒子の方向分布や計測頻度を候補地の地形を考慮に入れて計算した。宇宙線ミュー粒子によるバックグラウンドは、陽子崩壊探索や超新星ニュートリノの検出等、ハイパーカミオカンデで実施可能なあらゆる研究の感度に影響する基本的かつ重要なファクターである。(2)数メガパーセク離れた遠方で超新星爆発によるニュートリノバーストが発生した場合のハイパーカミオカンデによる真の検出効率および、大気ニュートリノと宇宙線ミュー粒子に起因する偽の検出効率を計算し、どのようなカットを行えばfigure of meritを最大としつつ現実的な検出効率を得るかを検討した。(3)GEANT4およびC^<++>をベースとしたハイパーカミオカンデ測定器のシミュレーションソフトの開発をめざし、基礎的な検討を開始した。 ハイパーカミオカンデのデータ取得用電子回路開発については、研究分担者(塩澤)がスーパーカミオカンデのデータ取得電子回路upgradeを主導しており、平行してハイパーカミオカンデで必要となる仕様の検討を行いつつある。 100万トン級水チェレンコフ検出器R&Dの国際協力については、中村、塩澤が関連する国際会議NNN06(米国ワシントン大学で開催)に参加し、各地のR&Dの進行状況に関する情報交換を行った。また、中村はハイパーカミオカンデ構想について講演した。さらに中村はUNOの建設候補地であるヘンダーソン鉱山について、米国の国立地下研究所とする構想の諮問委員会委員を依頼され、5月に行われた委員会に参加した。
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