研究課題
本研究計画は、格子ゲージ理論のなかでも厳密なカイラル対称性をもつ定式化を用いて量子色力学(QCD)の大規模シミュレーションを実行し、カイラル極限での信頼できる計算結果を得ることを目指すものである。厳密なカイラル対称性をもつ格子上のフェルミオン定式化はオーバーラップフェルミオンと呼ばれる。平静19年度においては、最初の大規模シミュレーションである、アップおよびダウンクォークの真空偏極の効果を取り入れたシミュレーションが完了した。格子間隔として0.12fm程度、クォーク質量としてはストレンジクォーク質量の1/6までの軽い領域をカバーした。格子体積は16^3x32で、物理的には一辺が1.9fm程度の領域に相当する。このシミュレーションでは、クォーク質量一点につき1000個という高統計なゲージ場サンプルを生成した。パイ中間子の質量と崩壊定数に関するデータ解析が最終段階にあり、K中間子の混合パラメターの計算も完了して論文を発表した。この大規模シミュレーションに加えて、クォーク質量が極端に小さい、いわゆるイプシロン領域でのQCDシミュレーションも実行した。この計算結果をカイラル摂動論の予言とつきあわせることで、いくつかの低エネルギー定数を決定することができる。その結果も発表した。これに続く大規模シミュレーションとして、ストレンジクォークの真空偏局効果を含む2+1フレーバーシミュレーションを開始した。
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Physical Review D 77
ページ: 094503
Physical Review D 76
ページ: 054503
Physical Review Letters 98
ページ: 172001
http://jlqcd.kek.jp/